ノウハウ
ドローン撮影とプライバシー|盗撮・近隣トラブルを防ぐ法律とマナー
ドローン撮影でトラブルを避ける鍵は、航空法だけでなくプライバシーや肖像権まで意識することです。
2026年6月には、近隣の住民をドローンで繰り返し撮影していた疑いのある事案が、庭木に機体が引っかかったことで発覚したと報じられました。
ドローンは手軽に高い視点から撮影できる反面、使い方を誤れば「のぞき」や「盗撮」と受け取られかねません。
ドローンは手軽に高い視点から撮影できる反面、使い方を誤れば「のぞき」や「盗撮」と受け取られかねません。
この記事では、ドローン撮影とプライバシーに関係する法律、総務省のガイドライン、近隣トラブルを防ぐマナー、そして自宅付近でドローンを見かけたときの対処法までを、ドローンスクール東京がわかりやすく解説します。
ドローン撮影でプライバシーが問題になりやすい理由
ドローンは、地上からは見えない場所を撮影できてしまうため、通常のカメラよりもプライバシー侵害のリスクが高いとされています。総務省のガイドラインでも、ドローンは住居の塀より高い位置を飛ぶのが一般的で、塀に遮られて普段は見えない場所まで写せる点が指摘されています。
主な理由は次の4つです。
• 視点が高い:塀や生け垣の内側、庭、ベランダ、窓の中まで写り込みやすい
• 気づかれにくい:上空の小さな機体は、撮られている側が気づきにくい
• ズーム・高画質:最近の機体は望遠や高解像度に対応し、離れていても人の顔や表札まで判別できる
• ネットで拡散する:SNSや動画サイトに公開すると一気に広まり、撮られた人への影響が大きくなる
つまり、撮影者に悪意がなくても、撮影の角度や公開の仕方しだいで「プライバシー侵害」と受け取られる可能性があるのです。
ドローン撮影とプライバシーに関係する主な法律
ドローン撮影には「飛ばし方」を定める法律と、「撮り方・公開の仕方」に関わる法律の両方が関係します。
100g未満の小型機で航空法の対象外であっても、民法や刑事罰の規定は機体の重さに関係なく適用される点に注意が必要です。
100g未満の小型機で航空法の対象外であっても、民法や刑事罰の規定は機体の重さに関係なく適用される点に注意が必要です。
航空法:人や建物から30m未満の飛行は承認が必要
• 人口集中地区(DID)の上空を飛ばす場合は、国土交通大臣の許可が必要
• 第三者や第三者の建物・車などから30m以上の距離を保てない飛行は、国土交通大臣の承認が必要
• 100g以上の機体は機体登録とリモートIDの搭載が義務
住宅地は多くがDIDに含まれ、家との距離も近くなりがちです。住宅地での撮影は、そもそも許可・承認なしに飛ばせないケースが多いと考えておきましょう。
小型無人機等飛行禁止法:重要施設の周辺は原則飛行禁止
• 国会議事堂、首相官邸、外国公館、防衛関係施設、空港、原子力事業所などの周辺上空は、原則として飛行禁止
• 飛ばす場合は施設管理者などの同意と、警察などへの事前通報が必要
民法:他人の土地の上空飛行と損害賠償
• 土地の所有権は、所有者の利益が及ぶ範囲でその土地の上空にも及ぶとされています(民法207条)
• そのため、許可なく他人の土地の上空を飛ばすと、土地所有権の侵害にあたる可能性があります
• 撮影によってプライバシーや肖像権を侵害した場合は、不法行為として損害賠償を請求される可能性があります(民法709条)
性的姿態撮影等処罰法(撮影罪):盗撮は全国一律で処罰対象に
• 2023年7月13日に施行され、正当な理由なく他人の性的な姿態などをひそかに撮影する行為が全国一律で処罰されるようになりました
• 法定刑は3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金で、未遂も処罰対象です
• ドローンで窓越しやベランダの人物を撮影する行為も、内容によっては対象になり得ます
軽犯罪法・迷惑防止条例:のぞき見も処罰の対象
• 軽犯罪法では、正当な理由なく人の住居、浴場、更衣場、トイレなど、人が通常衣服をつけないでいる場所をひそかにのぞき見る行為が禁止されています
• 各都道府県の迷惑防止条例でも、つきまといや盗撮に類する行為が規制されています
個人情報保護法:事業者の撮影は特に注意
• 事業として撮影する場合、不正な意図での隠し撮りは「不正の手段による個人情報の取得」として法律違反になるおそれがあります
• 顔や表札などで個人を識別できる映像を扱う事業者は、利用目的の特定や安全管理などの対応も必要です
総務省「ドローン撮影映像のガイドライン」の3つのポイント
総務省は2015年9月に「『ドローン』による撮影映像等のインターネット上での取扱いに係るガイドライン」を公表しています(2017年5月最終改定)。撮影の際は被撮影者の同意を得ることを前提に、同意を得るのが難しい場合に注意すべき点として、次の3つが示されています。
1. 住宅地にカメラを向けないなど、撮影の仕方に配慮する
• 住宅の近くでは、カメラの角度を住宅に向けない、住宅に向けてズームしない
• 高層マンションに水平にカメラを向けると室内が丸見えになるため、避ける
• 住宅地周辺では、ぼかし処理ができないライブ配信は行わない
2. 写り込んだものにはぼかしを入れる
• 人の顔、車のナンバープレート、表札、住居の外観、室内の様子、洗濯物など、生活状況がわかるものが写り込んだ場合は、削除やぼかし処理をする
3. 動画サイトなどの運営者は削除依頼に適切に対応する
• 撮影映像を公開できるサービスを提供する事業者は、削除依頼を受け付ける手続きを整える
また、ガイドラインでは、趣味や興味本位の撮影など公益的な目的が認められない場合は、プライバシー侵害と判断されるリスクが大きくなるとも述べられています。「趣味だから大丈夫」ではなく、「趣味だからこそ慎重に」と考えるのが安全です。
近隣トラブルを防ぐドローン撮影マナー・チェックリスト
法律を守るのは大前提です。そのうえで、周囲の人に不安を与えない配慮が、トラブル防止のいちばんの近道です。
飛行前にやること
• 飛行場所がDIDや重要施設周辺に当たらないか、地図や国の情報システムで確認する
• 必要な許可・承認を取得し、飛行計画を通報する
• 他人の土地の上空を飛ぶ可能性がある場合は、事前に所有者の了解を得る
• 住宅が近い場合は、近隣の方へ日時と目的をひと声かけておく
• 撮影範囲に住宅や人が入らない飛行ルートとカメラの向きを決めておく
飛行中に気をつけること
• 住宅や窓、ベランダにカメラを向けない、ズームしない
• 人の真上や近くで不必要にホバリングしない
• 補助者を配置し、声をかけられたら丁寧に目的を説明する
• 「撮らないでほしい」と言われたら、すぐにカメラの向きを変えるか撮影を中止する
映像を公開するときに確認すること
• 顔、ナンバープレート、表札、室内の様子、洗濯物などが写っていないか、公開前に全編を見返す
• 写り込みがあれば、ぼかしを入れるかカットする
• 住宅地周辺の映像はライブ配信しない
• 撮影場所が特定されるような位置情報の付け方に注意する
• 削除の依頼があった場合は速やかに対応する
自宅上空や近くでドローンを飛ばされたときの対処法
ドローンの多くは、点検や測量、許可を得た空撮など正当な目的で飛んでいます。
ただし、繰り返し自宅付近を飛んでいる、窓に近づいてくるなど不審な場合は、落ち着いて次の手順で対応しましょう。
ただし、繰り返し自宅付近を飛んでいる、窓に近づいてくるなど不審な場合は、落ち着いて次の手順で対応しましょう。
1. 安全を確保する:機体に近づいたり、物を投げて落とそうとしたりしない。墜落によるけがや、相手の機体を壊した場合のトラブルにつながります
2. 記録を残す:日時、場所、飛行の様子をメモし、可能であればスマートフォンで動画や写真を撮っておく。機体に表示された登録記号が見えれば控えておく
3. 操縦者がわかる場合は声をかける:近くに操縦者がいれば、飛行の目的を穏やかに確認し、撮影をやめてほしい旨を伝える
4. 警察に相談する:身の危険を感じる場合や盗撮が疑われる場合は110番、緊急でない相談は警察相談専用電話「#9110」へ
5. ネットに公開された場合は削除を依頼する:投稿先のサイト運営者に削除を申し出る。被害が大きい場合は弁護士への相談も検討する
カーテンを閉める、窓際での着替えを避けるといった日頃の備えも、自分のプライバシーを守るうえで有効です。
よくある質問
Q. 100g未満のドローンなら、住宅地で自由に撮影してもいいですか?
A. いいえ。100g未満の機体は航空法の多くの規制の対象外ですが、民法上の土地所有権やプライバシー・肖像権、撮影罪、軽犯罪法などは機体の重さに関係なく適用されます。自治体の条例や公園のルールで飛行が禁止されている場所もあります。
Q. 他人の家の上空を通過するだけでも問題になりますか?
A. 土地の所有権は、所有者の利益が及ぶ範囲で上空にも及ぶとされているため、無断での上空飛行は所有権侵害にあたる可能性があります。撮影の有無にかかわらず、事前に所有者の了解を得るのが安全です。
Q. 撮影した映像に通行人が小さく写り込んでしまいました。公開しても大丈夫ですか?
A. 公共の場の風景を流すように撮影し、顔が判別できないようにぼかしや解像度の調整をしていれば、問題になりにくいとされています。ただし、特定の人を大きく写した映像や、住居の中の様子がわかる映像は、ぼかしやカットで対応しましょう。
Q. 仕事でドローン撮影をする場合、個人よりも注意が必要ですか?
A. はい。事業者は個人情報保護法の対象になり、不正な隠し撮りは法律違反となるおそれがあります。撮影目的の説明、近隣への事前告知、映像データの管理まで含めた運用ルールを整えておくことが大切です。
Q. ドローン撮影のルールやマナーはどこで学べますか?
A. 国土交通省の登録講習機関であるドローンスクールでは、国家資格の取得に向けて、航空法や安全な運航方法、撮影時の注意点などを体系的に学べます。
正しい知識が、ドローン撮影の信頼をつくる
ドローン撮影で近隣トラブルを防ぐポイントは、次の3つです。
• 法律を守る:航空法の許可・承認に加え、土地所有権、プライバシー、撮影罪などにも注意する
• 撮り方に配慮する:住宅や窓にカメラを向けない、ズームしない、近隣にひと声かける
• 公開前に確認する:顔やナンバー、表札などの写り込みにはぼかしを入れ、削除依頼には速やかに対応する
ドローンは、空撮やインフラ点検、災害対応などで社会の役に立つ技術です。だからこそ、一人ひとりの操縦者が正しい知識とマナーを身につけることが、ドローンが社会に受け入れられることにつながります。
ドローンスクール東京では、国家資格(一等・二等無人航空機操縦士)の取得講習を通じて、法令や安全運航の知識を基礎からしっかり学べます。
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