ノウハウ

ドローン業務の委託で発注側が確認すべきポイント

イベントの記録撮影、インフラ点検、PR映像の制作など、ドローンを使った業務を外部に委託する企業や自治体が増えています。
一方で、「専門業者に任せたから安心」と考えていると、思わぬトラブルに巻き込まれることがあります。
 
2026年9月には、自治体などが主催するイベントの記録撮影中に、委託先が飛ばしていたドローンが庁舎に衝突する事故が発生しました。
この記事では、この事故から見えてくる問題点を整理し、発注側がドローン業務を委託する際に押さえておきたい注意点を解説します。
 

名古屋市庁舎ドローン衝突事故の概要

愛知県の発表によると、2026年(令和8年)9月17日午後8時50分頃、イベントの広報記録映像を撮るため受託者が手配したカメラマンがドローンを飛ばしていたところ、機体が名古屋市役所西庁舎の5階から6階付近の壁面に接触して落下しました。
けが人や庁舎の損傷はありませんでした。
 
問題となったのは、事故そのものだけではありません。

撮影は当初9月14日・15日の予定で国土交通省へ申請されていましたが、天候により15日・17日へ変更された際、17日分の手続きが行われていませんでした。
さらに飛行当日には、立入管理措置など必要な安全措置も十分に講じられていなかったことが判明しています。
また主催者側は、手続きや安全措置は受託者が行うこととしており、申請を行った旨の説明を受けていたものの、主催者としての確認が不十分だったとしています。

●「あいち・なごやアート&ライツ」広報記録撮影に伴う、ドローン飛行中における名古屋市役所庁舎への接触・落下および申請・実施体制の不備について
https://www.pref.aichi.jp/press-release/aichinagoyaartandlights202600.html

この事故から見える3つの問題点

1.日程変更にともなう手続き漏れ
当初の予定日については申請されていたにもかかわらず、悪天候による延期で追加された日の手続きが抜け落ちていました。
ドローン撮影は天候に左右されやすく、日程変更は珍しくありません。変更時こそ手続きの確認が必要です。

2.立入管理措置などの安全対策が不十分
人が集まりやすいライトアップイベントの会場周辺で、飛行エリアへの立ち入り管理が行われていませんでした。
今回は幸いけが人が出ませんでしたが、落下した機体が見物客に当たっていた可能性もあります。

3.発注側が「説明を受けただけ」で確認していなかった
発注側は「手続きは済ませた」という説明を受けていたものの、書類などで裏付けを確認していませんでした。
事故が起きれば、委託先だけでなく発注側の管理責任や信用も問われることになります。

発注側がドローン業務を委託する際の注意点

1. 許可・承認の内容を書面で確認する
夜間の飛行、建物や人から30m未満の距離での飛行、イベント上空での飛行などは、航空法上の「特定飛行」にあたり、原則として国の許可・承認や所定の手続きが必要です。委託先には、許可・承認書の写しを提出してもらい、次の点を確認しましょう。
 
-許可・承認の期間が撮影日を含んでいるか
-飛行の方法(夜間・目視外・30m未満など)が今回の撮影内容と一致しているか
-飛行させる機体・操縦者が許可の対象に含まれているか
 
2. 飛行計画の通報を、日程変更後も確認する
特定飛行を行う場合は、事前に飛行日時や経路などを「飛行計画」として国に通報する必要があります。
今回の事故では、まさに変更後の日程分が漏れていました。
延期や追加が生じた場合は、「変更後の日程で通報済みか」を改めて確認する運用にしておくと安心です。

3. 立入管理措置と安全計画を事前に共有してもらう
飛行エリアに第三者が立ち入らないようにする措置は、事故防止の要です。
発注前の打ち合わせで、次のような内容を具体的に説明してもらいましょう。

-立入禁止エリアの範囲と、その示し方(コーン、ロープ、看板など)
-補助者(監視員)の人数と配置
-離着陸場所と飛行ルート
-中止判断の基準(風速、雨、視界、周囲の人出など)
 
4. 再委託の有無と実際の操縦者を把握する
今回の事故では、受託者が手配したカメラマンが操縦していました。
委託先がさらに外部の操縦者へ再委託するケースは珍しくありません。
「誰が実際に飛ばすのか」「その人の資格・経験はどうか」「手続きは誰が責任を持つのか」を契約前に明確にしておきましょう。
 
5. 賠償責任保険の加入状況を確認する
万が一、第三者や建物に損害を与えた場合に備え、対人・対物の賠償責任保険に加入しているかを確認します。
補償額や、再委託先の操縦者も補償対象になるかもあわせて確認しておきましょう。
 
6. 天候リスクと予備日を想定しておく
ドローンは風や雨の影響を強く受けます。
予備日を設定する場合は、その予備日も含めて手続きと安全計画が整っているかを確認しましょう。
「天候が悪ければ無理に飛ばさない」という判断ができる事業者かどうかも重要なポイントです。
 
7. 事故発生時の対応・報告体制を決めておく
ドローンの事故が起きた場合、操縦者には負傷者の救護や国への報告などの義務があります。
発注側としても、事故時に誰が誰へ連絡するのか、現場での初動をどうするのかを事前に取り決めておくことで、被害や混乱を最小限に抑えられます。

発注前に使えるチェックリスト

・許可・承認書の写しを受け取り、期間・飛行方法・機体・操縦者を確認した
・飛行計画の通報を確認した(日程変更・予備日を含む)
・立入管理措置と補助者の配置計画を説明してもらった
・実際の操縦者と、その資格・飛行経験を把握した
・再委託がある場合、責任の所在を契約書に明記した
・賠償責任保険の加入と補償範囲を確認した
・中止基準と、事故時の連絡体制を取り決めた
 

失敗しないために:発注側にも国家資格取得者を

ここまで紹介したチェックポイントは、確認する側に知識がなければ十分に機能しません。
許可・承認書を受け取っても、その内容が今回の撮影に合っているかを判断できなければ、「書類をもらった」だけで終わってしまいます。

今回の事故でも、発注側は委託先から「必要な手続きは行った」と説明を受けていました。
もし発注側に、ドローンのルールや危険性を理解している担当者がいれば、「延期した17日分の飛行計画は通報済みですか」「夜間の庁舎近くでの飛行なのに、立入管理はどうしますか」と具体的に確認できたはずです。

そこでおすすめしたいのが、発注側の組織にもドローンの国家資格(一等・二等無人航空機操縦士)を取得した担当者を置くことです。

ルールを把握しているから、書類の中身を確認できる
国家資格の学科試験では、航空法をはじめとする関係法令、特定飛行の区分、飛行計画の通報、立入管理措置、事故時の報告義務などを体系的に学びます。
こうした知識を持つ担当者がいれば、委託先から提出された許可・承認書や飛行計画を読み解き、期間や飛行方法、日程変更への対応に漏れがないかを自分の目で確かめられます。
「説明を受けた」から「確認した」へ、チェックの質が変わります。

操縦の難しさを知っているから、計画の妥当性を判断できる
夜間は機体との距離感がつかみにくく、建物の近くではビル風やGPSの受信不良で機体が流されることもあります。
実際に操縦技能を身につけた担当者であれば、「この条件でこの距離まで建物に寄せるのは危ない」「この人員配置では補助者が足りない」といった判断ができ、委託先の安全計画に対して具体的な改善を求めることができます。

危険性を理解しているから、現場で「止める」判断ができる
ドローン撮影は、発注側にとっても「予定どおり撮りたい」という気持ちが働きやすいものです。
危険性を正しく理解している担当者がいれば、天候や人出などの状況を見て、発注側から中止や延期を提案することもできます。
委託先任せにせず、発注側としてブレーキをかけられることは、事故防止の大きな力になります。

委託先選びの目利きにもなる
業者選定の段階でも、知識のある担当者がいれば、提案書や見積もりの内容から事業者の安全意識や体制を見極めやすくなります。
実際に操縦する人の資格・経験や、再委託の有無といった確認すべきポイントも、漏れなく押さえられるようになります。
なお、発注側の担当者が自ら機体を飛ばす必要はありません。
大切なのは、ドローン業務のルールとリスクを理解したうえで、委託先と対等に話し、確認できる人が組織の中にいることです。
委託先の品質に加えて、発注側のチェック機能を備えることで、ドローン業務の安全性は大きく高まります。

まとめ

今回の名古屋市庁舎での事故は、「委託先に任せたつもり」が大きなリスクにつながることを示しました。
ドローン業務を外部に委託する際は、許可・承認や飛行計画の通報、安全対策を書面で確認し、実際の操縦者が誰なのかまで把握することが大切です。
 
そして、その確認を実効性のあるものにするためには、発注側にもルール・操縦の難しさ・危険性を理解した国家資格取得者がいることが望まれます。
委託先と発注側の双方に知識があることで、はじめて「二重のチェック」が機能します。
 
ドローンスクール東京では、一等・二等無人航空機操縦士の国家資格取得をサポートしています。
ドローン業務を発注する立場の企業・自治体のご担当者様が、委託先を正しく管理するための知識を身につける場としてもご活用いただけます。
 
また、ドローンスクール東京では、これまでに都内を中心に空撮や点検など幅広いドローン業務を請け負ってまいりました。
国への申請から当日の撮影はもちろん、補助者の配置や立入禁止措置の手配まで、徹底した運用体制で業務を行っており、これまで無事故・無違反で運航を続けています。
 
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